かきしま海道は広島県江田島市江田島町切串と呉市呉港をつなぐ海道だ。江田島、倉橋島は広島県内の牡蠣の2大産地の島をつなぐ海道のため「かきしま」と名付けられている。
と、説明しないとわかってもらえない時点でネーミングって難しいなぁと思う。
県道、国道を次々と乗り継ぐルートで、これまた複雑だ。切串側から説明すると、県道297,国道487、県道44、36、国道487、県道36、国道487となる。事前に県のHPで調べていくのがいい。それでこんな複雑なので区間ごとに話を進めていこう。
走行距離は85㎞ 平坦基調の道 道幅が狭いところも多い。ガソリンスタンドは少ないが、補給ボトルを持つほどでもない。交通量はそれほど多くない。
1.切串港~江田島中央区間
切串には広島からフェリーで行くことができる。切串港を下りて右へ行くと漁港、牡蠣いかだが見える風景が飛び込んでくる。広島は牡蠣の産地だなぁと視覚的に感じる。道は幸之浦地区、大洲地区を通過すると民家の区間に出る。東屋があった。
写真は別日に撮影したものだが、ここからは宮島が見える。と言っても皆が知る鳥居がある表側ではなく、裏側にあたる。ちょうど涅槃物のように見える。左が頭側だ。
道は狭い。車なら離合できない狭さだ。おまけにブラインドコーナーも多い。風景ばかりに見入っているわけにはいかない。
江田島青少年交流の家を過ぎると国道に合流し、ここから道は広い。そしてミカン畑も見えるようになる。江田島も瀬戸内の他の島同様漁業と柑橘栽培が盛んなんだとわかる。
江田島中央には海上自衛隊第1術科学校がある。旧海軍兵学校だ。会ったことはないが叔父が海軍航空隊のパイロットだった。テニアン沖で戦死した。死んだ祖母が一度だけ話したことがある。とても自慢の子だった。当時の状況から軍人に志願することはよくあることだった。戦士すると白い箱が送られてくる。中には空っぽだったそうだ。手紙は別にあった。「国のために子を産んで育てたわけではないんだけどな」
だから、ここの前を通るときの気持ちは複雑だ。
2.江田島中央~沖美町三高港区間
この区間は交通量が多い。そんななかリトルカブはトコトコ行くのだが、当然、車の流れには乗れない。だから、車道の左側を走る、それもキープレフトというレベルではなくい左側走行のテクニックと状況判断が必要だ。車道の左側はたいていかまぼこ型の段差となっている。そこを見定めながら走るのだ。時に気の枝が低くなっているところもある。頭上も気を付けなければならない。バックミラーで後続車を見ては、抜かせるタイミングを知らせなくてはならない。抜かせるタイミングが来たら、右ひじを2,3回振ればわかってくれる。原付ツーリングライダーは自動二輪ライダーとは違うテクニックが必要だと思う。
そんなこと考えながらやはり右手に牡蠣いかだが浮かぶ海を見ながら三高港を目指して走る。
3.沖美町区間
江田島市は江田島町、大柿町、能美町、沖美町の4町が平成大合併でできた市だ。人口が2万人ちょっとだから市としてはかなり小さい、その中でも最も小さな町が沖美町。ただ風景はもっとも美しい。三高港を過ぎて集落を少し走るとすぐに林間のワインディングに入る。時々、木々の間から見える海はきらめいて綺麗だが、じっくり見る間はない。リトルカブは3速、エンジン全開でそれでもようやく登っている。ブラインドコーナーもあって、なかなかスリリングだ。それでも峠の最後の方になると道幅は広くなり、気持ちよくパスできる。そこからは一直線に下るのだから、エンジンはエンブレで悲鳴を上げる。右側には広い瀬戸内海が広がる。その後も交通量の少ない海岸線を進む。
目の前の島は大黒神島。瀬戸内海最大の無人島だ。リトルのエンジンは無理せずトコトコと進める。
「のんびり走るにはいいな、のんびり行くのがいいな」
交通量が少ないと本当にそう思う。こんな田舎道だといろいろ考えなくて済む走りができる。海はきれいだし、風は気持ちいいし、感覚は優しくなる。
4.大柿町区間
この区間は普通の漁村地区の道路を走る。コンビニが多いのがあえて言えばいいところだ。この区間を過ぎると早瀬大橋が見えてくる。この橋が江田島と隣の倉橋島を繋ぐ橋だ。
5.倉橋島区間
この区間もまたあまり面白くない。漁村地帯を抜ける道路だ。カブのエンジンを軽やかにまわし、早々に抜ける。ちょっと楽しくなるのが最後の音戸大橋が見えてくるあたりだ。この辺りは音戸地区という。倉橋島は今でこそ呉市だが、元は音戸町と倉橋町という二つの自治体だ。その音戸町と本土をつなぐのが音戸大橋。できた当初は螺旋橋というちょっと特異な形状を持った橋だ。
今では隣に第2音戸大橋ができて、渋滞も解消されたが、ちょっと前までは渋滞で有名なところだった。
螺旋橋は結構傾斜がきついように感じたがリトルカブは3速で普通に登っていく。カブのRがきつくてステップを擦りそうだ。
音戸大橋を過ぎしばらく走ると、海上自衛隊の基地が見えてくる。
海上自衛隊の基地というのは、私には珍しくないが、そうでない人にはきわめて珍しいそうだ。護衛艦に潜水艦…改めて見るとなかなか壮観な風景かもしれない。特に潜水艦基地は全国でも少ないので、近くで見られるというのは珍しい。切串では、これら護衛艦、潜水艦が航行しているのが見られるので、そこで見るのも楽しいだろう。
そしてゴールの呉港には潜水艦の見学ができる「てつのくじら館」がある。
陸に上がった潜水艦の展示は全国でもここだけではないだろうか。中を見学することもできる。思った以上にはるかに中は狭い。当然窓もない。こんな中で訓練行動をしているのだから潜水艦乗りは激務だろう。
こうしてみると、かきしま海道は、牡蠣よりも海上自衛隊の見学スポットが点在するルートとなる。そして残念なことに牡蠣を食べるところは少ない。
交通量は、多くもなく少なくもなくというところ。全体的に島の町内を走るようなところが多い。ただ護衛艦が好きな人にはいいルートかもしれない。前半の海自第1術科学校、後半の呉基地、鉄のくじら館、大和ミュージアムなど見学個所は多いので、一つ一つ見ていくとかなりの時間となるだろう。また、術科学校、基地は観光地ではないので見学時間が決まっている。あらかじめ時間を調べていくことをお勧めする。